2005年06月02日

街の写真屋が取引先から「切られる」ということ(第4回)

前回の続き。


しぶとく生き残ってきた、この小さな写真屋の大英断。

小さくてスタジオとは言えない(失礼)自店のわずかな撮影スペースをツブし、
その狭い間口の、ほぼ横いっぱいの幅の接客用カウンターをつくった。
そして、その奥に鎮座するデカイ顕微鏡の様なキカイ。


そんな大鉈を揮ったこの店のオヤジ、
ある日、近所の同業者であるウチに馳せ参じ、こう切り出した・・・。

「ウチね、キカイ(DPE用の)入れたんですよ。で、よかったら仕事ウチに回しませんか?」


という文言で言ったかどうかは分からねえが、ようするにそういう旨の提案を持ってきたワケだ。

まあ、「営業」である。

たまにしか来ない撮影仕事に見切りをつけ、DPEの機械を導入しそこに特化することを決めた。
今後もそこそこの量が見込めることから、コレでやっていけるとふんだのだろう。

そうすると前出のDPEラボ同様、卸客であるウチには当然卸の値段でやることにはなるのだが。
しかしそこはドデカイ大口客いるわけでもないウチ同様、とにかく売上をあげたい。
そこでウチに営業にやって来たのだった。


こんな風に同業者同士で、互いの設備とか技術なんかに照らして仕事を融通しあったりするのは、
結構どの業界というかどの地域でもよくある話だろう。
「こういう仕事きちゃったんだけどさ、ウチ○○ないから難しいんだよね、オタクでできないかね」
とかいった具合に。
家電製品のOEM生産なんてのも、これと似たようなもんだろうな。


さて、

「ネガッタリカナッタリ」とはこのことか。
営業されたのではない。福音である。
ウチは数こそ少ないものの、
「Fカラー純正じゃねえと困る」とか「K系じゃねえとダメ!」という客がいる。
そんな状況下で、そのオヤジの申し出を断る理由など、あるワケなかった。


で、この話はまだ終わりじゃねえんだな。


そのオヤジの話の続き・・・


「その代わりといっちゃなんだけど、ウチに撮影の仕事きたらオタクに回すからさ」

「まぁ、タマにしかこないけどね(笑)」


なんと、ウチのDPE仕事を請けてくてるだけでなく、仕事ウチにまわしてくれるというのだ!。

この時ウチの両親には、このオヤジがさぞ神々しく見えたろう。
その日以降、この店との付き合いが始まったのはいうまでもない。
ホントに助かった。




ちなみに、その「まわしてもらう」仕事、

本当にタマにしかこない。


でもイイのだ。




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