2007年06月01日

ウチの地域は写真屋激戦区かも?(第7回)

浅草公会堂あたりにて
前回の続き。

そういえば当時、
この件について最も深刻そうにしていた母も、
私にこう言っていたっけ。

「あそこだって家賃払うのも大変だろうにねー」

ただ怖がっているだけかとおもってたが、
どうやら私と似たようなことを考えていたようだ。

自分ちが写真屋なだけに、
彼等のビジネスがどうして成り立っているのか
不思議だったらしい。

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こうして家賃とか人件費とか客単価とか
細かいことを色々想像してみると、
競争を優位に進めているように見える彼等も、
決して楽をしているワケではないのが伺える。

2000円とか4000円とか、
そんな客単価から捻り出す粗利。
そいつを積み重ねて積み重ねて、
そこからバイト君の給料とか光熱費とかを払う。
借金があればそれもそこから払う。
そして、
一通り払いきって利益が残る。

店舗件住宅で人も雇わない商売とは
利益構造が若干違うのだ。

資金投下して始めるわけだから、
最初はマイナスからのスタートだろう。
暫くは赤字のままだが、
スケジュール通りに黒字に転換させるのが
その店舗担当責任者やそこの店長の使命である。
そしてその後は順調に売上を伸ばし、
利益を計上し続けなければならないのだ。

DPEとか「写るんです」とかの売上でね。

想像しただけでも胃が痛くなってきそうだな。
大変だとおもう。

いつしか我々の恐怖心は、
「あの店、大丈夫かな・・」
という多少心配めいた感情に変わっていた。
それはもはや彼等への敵対心なんかではなく、
同業者に対する共感・哀れみにも似た感覚であった。

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ただ、そんな風に
いくら人様の財務諸表もどきが思い描けたとしても、
そんなのは所詮戯言である。
空想以外の何モノでもない。

薄利多売とかエラそうに言ってしまったけど、
ひょっとしたら高粗利の
高付加価値商品だってあるかもしれないし、
DPE店として成功すること以外の何かに
主目標をおいていたのかもしれない。

ただここでは、
その想像がどの程度正しいとか正しくないとか、
そんなことは
ハッキリいってどーでもいいのだ。

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辛い時には、
物事をことさら悪い方に捉えてしまう。
なんてことないものまで悪者にし、
自分たちの悪いところばかりが目に付くようになる。
さらに、
やらなくてもいいことをやり出したり、
続けるべきものを止めてしまったり。

誰にでも経験ありそうなそんなことが、
店商売でも当然起こるのだ。

辛くてどうしようもない時ほど、
しょうもない商材に手を出したり、
調子のいい儲け話に騙されたりするもんだ。
フィルムやなんかと並んで
東京みやげとか通販で売ってるアイディアグッズとか、
さしあたり写真屋となんの相乗効果も生み出さないようなものが
店頭に並びはじめたらヤバイ。
挙句の果て「値引き」(←コイツが一番ヤバイ)
でもしようものなら〜こうなると多分思考停止状態だろうな〜、
わが店は当初の思い込みの通りに「潰される」、
のではなく「自滅」の路を進んでいただろう。

いつだったかテレビで見たが、
本当に追い詰められてしまった経営者の精神状態は、
そりゃ尋常でないようで、
たとえば飲食店の親父なら、
塩と砂糖を間違えてしまうほどらしい、
ってなことが企業再建屋の話として紹介されていた。

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ウチの両親の精神状態を、
私は常に正確に汲みとっていたのだ、
などとぬかすつもりはない。

ただ、
落ち着いて周りを見回しよく考えることにより、
自分達を支配していたのは
「単なる思い込みからくる恐怖感」であることに気付いた。
そして、
マイナス思考の悪循環から脱出し、
自分を見失わずに済んだということ。

これは事実である。

客は増えていないが減ってもいない。
客層が変わったわけでもない。
儲けの、いや経済的困窮の度合いは以前のママである。
強烈に感謝されるたりはしなかったが、
クレームが増えたり
業務妨害まがいのことを仕掛けられたこともなかった。
そして勿論、
我々の仕事の質が低下することも
低下させられる事態も起きなかった。
何も変わらない。

恐れることなど、
最初から何もなかったのだ。

これも事実である。


そうしてウチは、
またいつもの写真屋に戻ったのである。

それからというもの、
彼等に向いていた意識は限りなく薄れ、
我が家の会話のネタになることもなくなった。

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ここでメデタシといきたいところだが。

実はこれとは別に、
私には気になることがあった。

「優秀であろう彼等がなぜ潰れてしまったのか」
(「ウチの地域は写真屋激戦区かも?」第4回参照)
と、このなんともエラそうな
自分でブっ立ててしまったこの大命題に、
私はまだ何も答えていないのだ。

妄想とこじつけは続く・・。

次号に続く。

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