前回の続き。
何年か前のちょうど今頃だ。
写真屋の折込チラシといえば、
この時期なら七五三である。
あまりにも微かな記憶であるが、
黄色だか黄緑だかの確かB4くらいの大きさの
片面スミ一色刷りの地味なヤツが
美容院とかマンションの広告に混じって入っていた。
思わずそいつを手に取ってしまったのだが、
それはあまりに他のチラシと違和感があったからである。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
有無も言わさず見た者に「手に取らせた」のだから、
そういう意味ではこのチラシは成功なのかもしれない。
だが、隅から隅まで一通り読んで、
それがあの店の七五三の広告だと
ようやく理解した。
習いたての下手なワープロで作りました的な、
味気ない実に粗野なものであった。
それに、何を言っているのかわからない。
いや、わからないというより、
狭い紙面で言いたいこと全て言い切ろうとしているようで、
窮屈な文章になり不自然だ。
信頼とか真心こめてとかお安くとか高品質とか歴史あるとか、
そして懇願。
そんな商売人側の都合のいい台詞だけが
固い印象のフォントで書き綴られていた。
その勝手一方なつくりが売り文句をよりウソっぽくさせている。
写真も確か1点か2点あったとおもうが、
モノクロで安価な印刷のせいなのか画質が粗く、
実際の仕上りを想像できるようなシロモノではない。
連絡先も下に小さく書いてあるだけである。
わかりやすい地図もない。
このチラシだけで「よしこの店にしよう!」とする家庭が
果たしているのだろうか。
自分で書いておきながらなんだが、
実はそのチラシ、
実際にどんな文言だったか
殆ど覚えていない。
ただ『ひどかった』ということだけが
強烈に記憶に残っていたのである。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
実は私はマーケティングなんかにも興味があって、
独自に結構突っ込んで学んでいた時期があった。
その流れでチラシなんかも少し研究したことがある。
やはりチラシにも定石のようなものがあるのだが、
そこに照らし合わせるとどうやら最悪チラシである。
どこがひどいのかというと、
とにかく店側の言いたいことを書いているだけで、
お客(予備軍)の訊きたいであろう事柄には
ほとんど触れていないことだ。
七五三はほぼ一生に一度である。
この瞬間はニ度とないのだ。
だから絶対にいい写真が欲しい、
でも高額だし神社なんかの予定もあるし・・。
お客は心配なのだ。
事前に店に訊きたいこと確認しておきたいことは
たくさんあるはずだ。
どういう段取り・システムになっているのか、
料金体系はどんななのか、幾らなのか、納期はどれくらいか、
どんな雰囲気の写真になるのか、待たされるのか、
貸衣装とかやっているか、駐車場はあるか等々。
仮にココにしよう!と決めて連絡しようにも
下の方に小さく連絡先が書いてあるだけで
見つけにくいし見難い(←直接訴求のチラシでは致命傷である)。
安いのは消費者にはありがたいことであるが、
全てにそうであるとは限らない。
あまりに安さを訴求されると
逆に品質面なんかで不安になったりもするし。
高品質とか言われても素人であるお客には
どこがどう高品質なのか判別つかない。
信頼ある当店で〜とか言われても、
信頼するに足る事由が紙面で述べられてはいない。
だいたい、
「信頼してください」とチラシで言われただけで
「ハイ信頼します」という消費者なんかいないのだ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
究極的に商人は広告物において、
『数ある同業者のなかでなぜ当店でなくてはいけないのか』、
ということについて言及しなくてはならない、
ということだ。
もう一つ重要なのは、
「効果測定」についての認識である。
まずはおおよその反応を見るためなど。
だから問い合わせ先や申し込み先がこれでもかというほど
シッカリ明記されていなくてはならないのだ。
問い合わせした人は大切な「見込み客」でもあるから。
そして来客者に「チラシご覧になりましたか」と尋ねるか、
あるいは「チラシみたんですけど」という客を勘定すれば、
幾ら突っ込んで幾ら売り上げたかという、
費用対効果の測定が可能となる。
だからチラシにクーポン券付けるとかチラシ持参割引というのは、
売り上げること同等の重要な意味と機能を持っているのだ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
あえてこのチラシで
良かった点をあげるとするならば、
一つは
撒く時期は概ね正解であったこと。
もう一つは、
その貧相なつくりのお陰で
他の立派なチラシの中で異彩を放ち、
良くも悪くも結果として
多くの人の目に触れたかもしれないことだ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・
確か2000年頃だったかともう。
今こんな風に書いてはいるが、
当時私はこのチラシを見て彼等を全く笑えなかった。
ひどいつくりであることは勿論分っていたが、
そんなこと以上に、
もうなり振りなんぞ構ってられねえ、
とにもかくにも売り上げなければという、
並々ならぬ悲壮感が
そのチラシから感じ取れたからだ。
不恰好な紙面だから尚更そう感じたのかもしれない。
この頃ウチもかなりキツかったし・・。
次号に続く。
Posted by bakashatokyo68 at 22:07
│
Comments(1)
│
TrackBack(0)
│
エッセイ・ウチのこと他