2009年08月28日

写真屋の客は写真屋(第5回)

吉祥寺にて。
前回の続き。

ある日、
店のPCにちょっとした不具合があり
私が面倒をみていた時のこと。

その傍らで親父あてに電話があった。
どうも古い同業の知り合いのようだ。
「あーどうもー、元気ー」
しばらくの他愛無い会話が続いていたが、
やがて聞こえてきたのはこんな話・・。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「え、○○さん?、あそこは何年も前に止めちゃったねー」

「そういえば○○さん覚えてる?、
  あそこももう止めちゃったんですよねー」

古い同業の多くが店を閉めてしまっている話だと
すぐに判った。

そしてここで紹介した、
あのなくなってしまった写真館と、
そこにいた中卸の方の話にもなった。

「Aさん(その写真館をそう呼ぶことにする)も
 止めちゃったんですよ」

「もーホントにみんな止めちゃったよ。
 でね、そこにいた人(中卸の方)がさ、今でも
 卸引き継いでやってんだけどさ、スタジオ相手にね。
 で、その人言ってたけど、
 全盛の時は20件くらいだったのが
 今ウチ含めて4件くらいだってさー」

それだけ写真屋が減ったのも残念だが、
(この方の言うところの)少ない生き残りの一つに
ウチが含まれているというのは
驚きである。

これはもちろん、
別にウチが優秀なわけでもなく、
単に他に食っていく手段がなかったので
止められなかったというだけのことである。

で、この中卸の方であるが、
基本的には道具卸であって、撮る方はやらない。
店を構えているのでもなく、ご自宅が事務所兼倉庫である。
だが商売柄か人脈が広いらしく、
写真屋関連の業者ということで
画像加工処理の依頼を受けるようだ。
ある団体のエライ人の肖像に
勲何等だか知らねえが勲章くっつけてくれとか(つまり合成)、
古いイベントでの記念集合写真なんかを
A3に伸ばしてくれとか、
あとは昔の写真のレストアとか。
となるといわずもがなであるが、
この手のモノは処理できず
ウチへやってくるのである。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

つい先日、
店にブローニが数本揃えてあったのを見つけた。

小売としてはほとんど機能していないウチは、
こういった物販に関しては申し訳程度の品揃えである。
フィルム等はたった数人の写真好きのお客向けであり、
あとは頼まれて仕入れるだけだ。
あーめずらしいなと思いながら
そいつイジっていると親父がこう言った。
「今度ブローニの仕事あるんだよ」。

第1回で書いた学校専門写真屋サンから先日、
また仕事をいただいたのである。
以前やったことのある幼稚園だ。
今度はスナップとかでなく
集合写真らしい。

親父は以前からこういう機会に備え、
6×9の某フィルムメーカーのカメラを
1台欲しいなとか言っていた。
写真屋御用達の無骨なアレである。

この写真屋サンもコイツを3台所有しているとかで、
「ウチの使っていいよ」と言ってくださった。
だがこの話を上の卸の人にしたところ、
「ウチにあるヤツ貸すからさー是非使ってよ」
と強くアピールされたらしい。

何度かこの方から機材借りることかあるが、
恐らくそのままウチに買わせたいのかな(以前そういうケース有り)。
最近売れないし値崩れも激しいとボヤいていたし。
結局この方から借りるらしいが、
そんなに高いものでもないし買ってもいいと思う。


でもなぜブローニなのか。


この方も勿論プロであるが
実は1年ほど前に
ようやくデジタルを使い出したところで、
まだ危なっかしくて信用できないのだそうだ。

ウチの親父が
「コレ(EOS5Dmark?)ならフィルムより
 ずっと細かく撮れるけどねー」と説明しても、
「イヤイヤやっぱり中判で頼むよ心配だから」
と言う。

以前、
この写真屋サンのお得意に
ネガを残して欲しい人がいるというのを書いたが
どうも私の確認し損ねらしい。
デジタルが信用できず
ネガ残して欲しかった人というのは、
実はこの写真屋サンご本人だった。
集合写真のような改まったものはやはり、
撮り慣れたモノでやって欲しいのだなどうやら。
そういえばデジタルの仕事はみな
スナップばかりだったな。

ウチもデジタル導入当初、
結構キツかったのを思い出す。

なにしろ潰れかけの店だから
揃えた機材はどうしても中途半端になる。
600〜800万画素のデジタル一眼を使っていたが、
近所の幼稚園の入園式の際、
ちょっと感度を上げて撮ったら
ノイズだらけで園児父兄の顔が荒れ放題、
PCのことも何も分からずに
不味い色をコントロールすることもできず、
当時の私でも分かるくらい汚い絵面になった。
「これクレームこねぇかなー」と本気で心配になった。
NikonF5ネガカラーで『おさえ』で撮ったヤツの方が
全然マシな(自然な)色をしていた。
こういう場合は昔だったら、
ウチの場合はMamiyaかPENTAX645だった。

そんなわけで、
この写真屋サンの気持ちも
解からないことはない。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

たまたまご縁あって知り合った
この御三人。
ビジネスパースンとしては
ウチなんかよりもずっと上だと思っている。
その事業規模や内容(本来比べるのも可笑しいが)、
商売人としての態度・立ち居振る舞い等。

しかし、
皆必ずしも技術的に最先端というわけではないのが、
なんとも面白いというか興味深い。

次号に続く。

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この記事へのコメント
みなさん、
それぞれに違って、
それぞれに、なんか持ってて。

いいですね、そういうの。

マンションではない、
ご近所づきあいのあった、
子どもの頃に、
帰ったような気がします。。
Posted by フラフラです。 at 2009年08月31日 19:40
フラフラさん
いつもありがとうございます。

日々シビアにビジネス(非生業)されている方なら、
こんな有様に笑ってしまうか
お怒りになるかどっちかでしょうが、
こういった付き合いが
決して万能ではないウチのような小さく非力な者を
生きながらえさせてくれているわけです。
そのことに客とか同業者とかいう区別も、
あまり関係ないんですね。

本当に幸せなことだと思います。
Posted by 東京下町バカ写真屋 at 2009年09月01日 01:10