2009年11月06日

写真屋の客は写真屋(第9回)

丸の内にて(丸ビル)
前回の続き。

前回の話が
すでにオチになっている気がするので、
最後にオマケ的な話を加えて
本章のまとめとさせていただきたい。

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つい先日の土曜であるが、
浅草のある小さな演芸場で撮影の仕事があった。
撮ったのは私である。
当初親父が行く予定であったが、
別の撮影とぶつかったため、
私が行くことになった。

劇場から直接の依頼ではなく、
ある出演者(主演)の後援会の方がお客である。
この方、住まいはウチの近所だが、
浅草寺近くに食料品店を出して商売されている方で、
その役者サンのパトロンのようなこともやっている。
またご本人もそういうのがお好きなようで、
よく端役として舞台に登場したり、
また自分が主催者となって
舞台を切り盛りすることもある。

その役者サンてのが、
なんと言ったらいいのか喜劇役者というか
古いタイプのコメディアンというか、
なんとも形容し難いお方である。
勿論ローカル芸人であるが、
聞くところによると、
浅草六区・伝法院界隈では知らぬ人がいない程の
有名人だとか。
地元紙なんかにはよく登場する。
たしか60才近いと思う。
かつてはこの地に縁のある某超大物喜劇人の
付き人をやっていてた時もあったらしい。
『売れない芸人』だとか自虐的な自己紹介をしたりするが、
その通り本業だけでは食っていけず
別に仕事も持っている。

で、今回のお客であるご主人が
この役者?サンに惚れ込んで
色々世話している。
見た目はフツーのオジサンだが結構積極的で、
報道各社にプレスリリース的なことも
よくやっている。
そのため某大手新聞なんかに載ることも度々ある。
私が過去に撮影した際には、
椅子に「○○新聞社様」と席が確保されていたのも見た。
テレビにもこの2人揃って登場したこともある。

宣伝だけでなく
広告物の作成もこの方が手掛ける。
当然写真が必要になってくるが、
たまたま近所で顔見知りだったせいなのか、
ウチにお声が掛かったわけである。
それ以来この方が絡む舞台については、
広告用・舞台スチル撮影共
ほとんどウチがやらせていただいている。
私自身もここでの撮影は4回目になる。
衣装・メイク付きで直接ウチにお越しいただいたこともある。

最初は撮影だけの仕事だったが、
広告物自体も依頼されるようになった。
以前当ブログで書いたことがあるが、
『チラシやポスターのデザインの仕事もやる』
というのは、
実は多くがココの仕事である。
やがて後援会用名刺やチケットのデザインまで
ウチでやるようになった。
ウチというか厳密に言えば
やっているのはこの私である
(ウチの親父はそこまで出来ないので)。
デザインといってもイラストレータは扱えないので、
全部フォトショップでやる。
前者より出来る事は限られるが大体なんとかなってしまう。

有り難いことに、
これが当人はじめ周囲の方々にも好評だとかで、
そのことが人伝いに微かに聞こえてきては
嬉しく感じるのだ。

そのポスターをこのご主人、
仕事と関係ないのに自分チの店頭でも
デカデカと貼り付けている。
伝法院界隈を歩いている方ならもしかして、
一度でも私デザインのそれを目にされているかもしれない。

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さて実際の撮影であるが、
今回は単なる記録としてというご要望のため、
そんなにシビアな撮影ではなかった。
センター通路の一番後のちょっと脇に三脚を立て、
全て横位置でそれぞれの場面数カットほど
主人公中心に撮っていく。

ところが
いつもの定位置でと思って中に入ると先客がいた。
ちょっと早く着き過ぎたため、
観音さま(浅草寺)と三社さま(浅草神社)に
お参りしてたのだが、
小屋に戻ると開場時刻を数分過ぎていた。
見知らぬおばちゃんである。
既に三脚を立てていて、
L70ー200が付いたEOS1D系のボディが乗っかっていた。
仕方が無いのですぐ隣に陣取った。
こちらは導入したてのD300sである。
レンズ含めても値段ではこちらの倍だな。
だがサブ機を用意していないのが商売人との違いかも。
そういう私のバッグの中にあるのは、
なんと旧5D。
一つの仕事でニコンとキャノン両使い。
決してプロが犯してはならない愚(?)である。

でも仕方ないのだ。
親父は別の撮影でウチにあるキャノン一式
全部持っていってしまった。
残るはニコン系(ボディは1台)。
メインはそれでよい。
しかしそれ以外はウチにゴロゴロしているフィルムカメラと、
私個人所有のEOS5Dだけである。
ならばそいつを、となるのだが
生憎今回の撮影に適した長さの玉がなく、
本章初めの方で紹介した中卸の方にお願いして、
撮影前日に急遽貸していただいた。

ところが、
大変有り難く思いながらも、
その借りたレンズってのが
実に心もとないシロモノだった。
キャノン純正AF(非L)の古い高倍率ズームだったが、
銅鏡が納まりきらず先端がカパカパしている。
キズも多く酷使された痕跡アリアリのまさに中古品。
サブもメイン同様に使える状態でなければ
サブの意味が無いのだが。
「これ大丈夫かよー」と思いながら
繰り返しテストしてみるが
撮影結果には何の問題もなかった。
不安は拭えないがこれはこれでよしとした。

幸運なことに、
当日こいつを使わねばならぬ緊急事態に
陥ることはなかった。

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当日、
開演から3、40分ほどして、
なんとウチの親父がやってきた。
撮影が早く終わったらしい。
私のところへ来て何か黒い包みを差し出した。
レンズである。
遊び用に最近買ったタムロンのズームである。
「サブの方、こっち付けて。そっちのヤツは返してくるから」
どうやら親父も心配だったようだ。

蛇足だが、
ウチの親父がこの演芸場では顔パスだということを、
この日初めて知った。


でも本当に心配だったのは、
レンズよりも
この私の仕事っぷりの方なのかもしれない。


長くなったので次号に続く。

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