2010年12月24日

写真屋の差別化って何だ?(第5回)

東京スカイツリー近景
前回の続き。

どの業界でも見本市みたいなものがある。

東京で見本市会場といえば昔なら晴海だったが、
今では東京ビッグサイトが多いかな。
池袋サンシャインとか、
北の丸公園内の科学技術館というところでも開かれる。
他には横浜みなとみらいとか千葉の幕張メッセとか。

BtoBの見本市であれば、
そこにいるとまるで
全国の業者が一同に会しているように思えてくる。
会場がデカいし人も多いし
それなりに盛り上がっているから。

でも実際は、
そこにいるのは業界の中の
ほんのごく一部の人たちなのだろう。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

業界の牽引役といってもいい出展者がいて、
向上心探求心あるいは商魂旺盛な来場者がいる。
諸事情で来たくても来れないという人も多いだろう。

そのどちらでもない人がいる。

そういった見本市などに興味を持たない、
というかそんな催し自体に気づいてすらいない。
業界や世の中の雰囲気と断絶してしまっている。
良くも悪くも、
30年前と同じペースで仕事をしている。

ウチのようなやつだ。

私は今、
2008年夏に東京ビッグサイトで行われた
業界向けのある催しのことを思い出している。
当時親父は届いていた案内状にすら気づいていなかった。
で実際に行ったのは写真屋ではないこの私である。
写真関係でそういうのに行ったのは後にも先にもそれっきりだ。
以前にもブログで書いたが、
私にハッキリとした目的があったわけでもなかった。
ただなんとなく写真屋の業界ってどんなのかな、
てなことが知りたいというか、感じたかった。
ウチがあまりにもグダグダだったからである。

この催しについて以前書いたので詳細は省略するが、
その日の私はザっと全体を見まわした後、
タダで面白そうな講演会をずっとやっていたので、
それを見て一日が終わってしまった。

という話をすると人は私にこう言う。
「何のために見本市行ったんだよー」と。
まあ確かにそうだよな。
目的はないよりあったほうがいいし、
より強く明確な目的であればなおよい。
でも目的がなかったからといってたいした問題も起こらないし、
逆にいいことがあったりもする。
まあどっちにしたって、
目的ってのは他人に決めてもらうものではない。
東京ドームの野球の試合に、
シートの座り心地チェックのため(だけ)に行ってもいいのだ。
そのことで野球関係者から咎められることもなかろう。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

さて今回、
気になって思い出そうとしているのは
以下のことである。

それは「大提言」と称された
ある写真館主宰の方の講演についてである。
同一の講演が会期2日間とも行われていたから、
かなり重要な扱いということか。
他のセミナー・ワークショップは一回キリだから。
朝早い時間だったようで私は直接聞いてはいない。
当日現場でもらったパンフレットに
その趣旨らしきものが書いてあったとうっすら記憶していただけだ。
私のPCに当時のリンクがそのまま残っていたので、
確認できればとクリックしたら
運良くそのページがまだ存在していた。

以下のような内容だった。

①スタジオ写真の基本は家族写真であること。
②家族写真を撮ることが、
 家族があることの幸福感を得られる一助となりうる。
③NPO法人・基金の設立。
④上記の事柄を通じて地域社会における写真館の
 プレゼンス・ステイタス向上を目指すこと。
⑤習慣的で安定的な家族写真需要の創出。

ざっとこんなカンジかな。
箇条書きにすると味気ないが、
その紙面は小さく短い文ながらも、
「家族のぬくもり」「愛」「恵まれない子供たちを応援」
といった言葉を含んだ、
情緒的に訴えかけてくるようなものであった。
実際の講演自体はどうだったのだろう。

話を聞いてもいないのに、
しかも写真屋でもない私が評するのも変だが、
このことに全く異論はない。
大変いいことだと思う。

ただ、
そういう「愛」「ぬくもり」とかいう、
意地悪く言えば歯の浮くような言葉を使い
情に訴えかけてくるようなものを、
多くの人は薄気味悪がったり避ける傾向にあると思う。
または「商売そんな甘いもんじゃねえよ」とか、
「そんなキレイごとでビジネスできねえよな」
とか言ってバカにしたり無視したり。

だからこの人はスゴいなと思う。
顔も名前も出して堂々とこう語るのだから。
紙面だけでなくステージでもね。同業者や取引先に対して。

それだけではない。
「『家族写真を撮りましょう』と呼びかけるだけではだめ」
「とにかく実際に撮ってもらってその感動を知ってもらう」
という考えのもと、
なんと10年間に渡り無料(!)で家族写真を撮り続けてきたという。
これは方法論として万能と言い難いとは思うが、
それだけの強い信念があってのことだろう。
その信念の下そこまでやってきたからこそ、
実際に撮った客達がどのような反応を示すのか、
よく分かっているに違いない。
この方の10年分の実践結果は、
その提言の論拠となるに十分なものだったのだろう。

会ってもいなければ見ても聞いてもいないことに、
これだけ論ずるのも些か気味悪いかな。

私も前回、
ウチに家族写真を撮りに来た客の様子について書いた。
ウチなんかと比べたらその方に失礼かもしれないが、
たった数件の家族写真からでも、
撮った(撮っている)家族たちの何とも言えぬ多幸感みたいなものが、
部外者の私にさえも十分伝わってきた。

だからこそ思うわけだ。
この方の言っている(書いている)ことは
嘘ではないとね。

「家族写真」というか
「写真屋が写真を撮ること」が、
お客の心の中に「感動」を生み出せるという『事実』であると、
この方はご自身の長年の実践で明らかにしたのではないか。
そして、
そういった感動(等)が生み出せてるからこそ、
地域社会に「必要とされる」写真屋になれるのだ、と。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

と勝手に書いておいたなんだけど、、
私が本当に重要だと思っているのはそこじゃなくて、
上に列挙した最後の、

「⑤習慣的で安定的な家族写真需要の創出」

の方である。

補遺: 今月初めに体調を崩して以来伏せがちで、
投稿遅れすいません。
不規則投稿はいつもなので言い訳にもなりませんが、
本年もお付き合いいただき本当にありがとうございました。
年内はあと一本数日以内アップします。
来年もまたよろしくお願いします。

次号に続く。


人気ブログランキングへ・クリックお願いします!



この記事へのトラックバックURL