2016年07月25日

ブログ7周年記念〜戦略的写真屋とは何か(第28回・最終回特別編其の6)

新たな風物詩「夏詣」にて:浅草神社(東京都台東区)















前回の続き。


超久しぶりの投稿になる。
勝手にシリーズ化しておいて長期休業にしてしまい、
お恥ずかしい限りである。

でもって、
ちょっと変な話をしたい。

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暫く前に、
ある散髪店に行った。
近所にできた新しい店で、
勿論そこを利用するのも初めてである。
いわゆる激安店で、
小さい店だが外装も垢抜けていて、
第一印象は悪くはなかった。
料金も私の知る限りでは最安であった。

そんな印象のこの店、
私が通りがかる時はいつもガラガラだった。
というか一人も客がいない時の方が多いのだ。
なので余計気になっていつか行ってみようと思っていた。

ある日曜日の午後、
その店に入ると、
店主らしき人が一人で対応している。
どうやらそういう店らしい。
腹が立つほどではないが愛想良いというほどでもない。
私の前に2人ほど先客がいて、
黙々と作業中での気の抜けた「いらっしゃいませ」を聞き、
特に何も説明を受けるでもなく待ち席に座った。
こういう店ならどこもシステムなんて大して変わらんだろうと思っていたが、
一部の有名ファストフードチェーン店のような
券売機(つまり前金チケット式)方式であることが分かった。
一人で応対するのであれば、
金銭授受作業は端折ってしまえるのならそうする方が
ビジネス的にはグッドだと思う。
間違いもなく後からの集計もし易いし、
何といっても客が自ら会計を済ませてくれるのだから。

ただ私はこの発券機の存在を、
私の番直前まで気づかなかった。
というのも、
このことを店主は一言も説明してくれなかったのだ。
じゃなぜ分かったのかというと、
私の隣に座っていた先客が立ち上がった時、
彼のどいたところに券売機があることに気づいた。
彼の体で私の位置からは券売機が見えなかったのである。

それ以外にもいくつか気になる点があった。
店内にあった「断り書き」である。

一つは「酔っ払いお断り」である。
まあこれは当然であろう。
自分で言っていることもあやふやだろうし、
頭もグラついて危なくてしょうがない。
恐らくそういう客が実際に来たのだろうと推測するが、
こういうのは初めて見たので少々驚いた。

もう一つは、
「要望はハッキリ分かりやすくと伝えろ」というものである
(現物はもっと優しい言い方であったが)。
「分からない場合は一緒に相談しましょう」
みたいなことも書いてあったが、
そのさほど大きくないボードが一つ、
メインの座席正面に掲げられていた。
一応待っている客にも見える程度の大きさではあった。

まあこれも至極妥当とは言える。
逆の立場を想像すれば彼(ら)の言い分も納得である。
ある人からRAW現像前の風景写真データ渡されて、
「これグワっとするようなイイカンジに現像してよ」
とか言われるようなもんであろう。

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そして私の番になるわけだが、
サイド刈り上げで上の方を残す
今風の横分けにしたかった。
国内外問わず近年の芸能人やスポーツ選手にも多いスタイルだと思う。
正式な呼び名があるのかは知らないが、
相手はプロだからトレンドなどもチェックしているだろうとは思っていた。
なので特に気にすることなく

「横を刈り上げて今風の横分けにしたいんですけど」

と伝えた。
瞬時に彼の表情が曇るのが分かった。
結構アバウトな指定だとは思ってはいたが、
少々あせった。
すかさず二言三言付け加えたがそれでもウマく伝わらず、
苦し紛れに、

「エグザイルみたいな」と言ってしまった。

「かなり変わってしまいますけどいいですか?」

と言われた。

やっと伝わったようである。

ちなみに、
私はエグザイルというグループが何人組みなのかも知らないし、
実際に私がしたかった髪型の人物がいたかどうかも知らなかった。
もちろんファンでも何でもない。
ただ単に「そういう髪型がいたような気がするなー」程度の認識である。


そしてカットが始まった。

私:「こういうのって、呼び名あるんですかねー」

店:「んーあると思うんですけど定かではないです・・」
  「以前そういう注文したことはあるんですか?」

私:「いやこれが初めてですよ」
  「ただいつも意思疎通は難しいと感じてるもんですから・・」

それ以降の会話はなかった。
私の最後の台詞は感想というより
こちらの言い分を理解してくれなかった相手に対する皮肉にもとれるが、
どう受け止めたかなど分かるはずもない。
どっちにしても彼にとって私は喜ばしい客ではなかったのだろうな。

カットはあっという間に終わった。
あまり丁寧な印象派なかったが乱雑でもなかった。
そして何よりも、
結果的に仕上がった髪形には満足している。
ただ少々複雑な気分ではある。

カット中にも周りを見回したが、
いくつか興味深いものが散見された。
「当店は整髪料(のサービス)はありません」
「余計なサービスはせずカットのみで安価を実現しています」
とあった。
なるほどまさにカット専門店なわけだな。
まあ納得であるが、
あんなやり取りの後だからか、
それら文言の一つ一つが刺々しく感じられた。

それから、
ホームページのアドレスが紹介されていた。
店は寂しいのに(失礼)ウェッブはあるんだーと、
これまた意外な感じであった。
今時の理髪店といえばそうなんだろうな。

ちょっと話しが前後してしまうけど、
私が自分の前後を見ていて気づいたのは、
客の注文が私に負けず大雑把なことである(私の前後2人だけだが)。
たまたまかもしれないが、
「後ろ刈り上げて」とか詳しくは失念してしまったが、
ほぼ一言で済んでいた。
昔の床屋でおっさんが
「またボーズでいいよボーズで」程度で済んでしまうような、
そんな感じだった。
勝手な推測であるけども、
そういうのが彼にとっての好ましい客なんだろうなと思った。

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でもってこの店に対する私の総合評価といったら偉そうだけど、
総合的な印象はというと、
「店全体を自分(一人)の思うようにしたんだろうな」
「自分に都合のいい客だけ来て欲しいし、そうでない客は来るな」
「客はこっち(店ないし店主)の都合に合わろ」
ってなカンジかな。
繰り返すが私の感じた単なる印象である。

しかしである。
客の要望が分からないというのなら、
ヘアカタログ的なもの、
独自のものでなくとも雑誌でもいいから
用意しておけばいいだろう。
それを客に見てもらってイイのがあれば
「これにしたいけど、大丈夫かな」
「コレにはちょっと前髪が足らないですね」
といったようなプロと素人とのやり取りが成立しやすくなる。
私のかつて通った美容理容店ではどこでも「それ」が用意されていた。
だがこの店にはそれがなかった。

だいたい、
客が自分の要望をプロに対して客観的に説明できるというのなら、
もはやそいつは素人ではない。

帰宅してからその店のホームページを見てみると、
店の利用方法がちゃんと説明されているではないか。
しかも待ちの席の座り方(待ち方)まで指定している。
ちょっと変な気分である。
もしかしたら彼は
店のHPを見てから店に来て欲しかったのかな。
それならばいちいち説明する必要ないし。

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ここでどうか誤解して欲しくはないのだけど、
私はこの店を決して非難したいのではない。
こういうスタイルの商売があってもイイと思っている。
実際に彼らのサービスで満足している客もいるのだろうし。
となればこれ以上ガチャガチャ言う必要はないのだ。
どんな商売しようが彼の自由である。
もし消費者に受け入れられなければ店が潰れるだけなのだから。

でもって私は今後、
この店を利用することは恐らくないだろう。
と同時に、
それまで通っていた
数百円高いけど似たような店の、
技術は確かながらもその没個性的というか
今風というか資本主義的合理性に基づいた
システマチックな店の、
その100円か200円程度の差に、
とてつもないサムシングエルスを感じたのである。

それまで通っていた店で体験していた
何気ないというか当たり前のことが、
失われたことで初めて
それらの存在と価値に気づいたのである。

「安けりゃいいってもんじゃない」

という言葉がシックリきた瞬間であった。

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当ブログにて数回前から
「卸売・中間業者は必要に決まってんじゃねえか」
という話をしているけど、
今回も一応その続きにある。
何とか一般消費者の立場からも説明しているつもりだが、
たぶん従来の話とあまり変わらないはずである。
というのも、

〜卸だろうが最終消費者だろうが、
 自分の購入前に誰かが一手間かけてくれることによって
 購入者の利益がより最適化されるという点で、
 卸も小売も消費者も一緒だ、〜

と考えているからである。

だが今回の話が
直接はその説明になってはいないので、
次回に譲る。


次号に続く。


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